大判例

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東京高等裁判所 昭和53年(ネ)2544号 判決

二 ≪証拠≫を綜合すれば、次の事実が認められる。

1 控訴人は、不動産の販売、賃貸、仲介等を業とする会社であるが昭和四二年頃から長野県北佐久郡軽井沢町大字長倉字鶴溜に約二〇万坪という広大な原野を取得して、これを別荘地として開発造成し、「軽井沢三笠パーク別荘苑」と名付け、約七〇〇区画に分けて売出した。本件土地は、そのうちの七区画である。

ところで、右別荘地には、公共の上下水道の設備がないため、控訴人はその造成に当り、専用の水道、排水、道路、防犯灯等同別荘地の維持管理に必要な諸施設を設けて、自らこれらを所有するとともに、別荘地の取得者から管理料を徴収して右施設を別荘地の取得者に使用させることとした。そして、控訴人は昭和四五年八月一日付で現行の「三笠パーク別荘苑管理要領」を作成し、これに基づいて別荘地の維持管理を推進してきた。なお、右管理契約の内容となっている前記管理要領には、共益管理として、苑内道路の補修等の分譲地内管理防犯管理及び専用水道施設の維持管理が列挙されており、また、右管理に要する費用は、同別荘地の土地所有者において当然負担すべきものとして、契約者のみならず、右土地の承継人、土地譲受人にも適用されるものと定められている。このように、右別荘地の利用者にとっては、右の共益管理が必要不可欠である(右の必要性は被控訴人もこれを認めている)一方、管理者側である控訴人としては、右共益管理を行うための経費を同利用者から徴収する必要があるため、控訴人は、控訴人との間に紛争のあった若干の事例は別として、別荘地取得者に対し、前記管理要領に基づく管理契約を結ぶよう鋭意働きかけたのである。

2 他方、被控訴人は不動産の販売、仲介、管理を業とする会社であるが、昭和四七年一〇月上旬有線商事株式会社から本件土地を買受けて、所有するに至ったが、前記管理契約を結ぶことなく放置していた。そして、昭和四九年二月頃本件土地を他に分譲することを計画して、控訴人に本件土地の管理について問合わせたところ、控訴人の社員から、前記管理要領に基づいて管理費を前払のうえ、管理契約を結ぶよう指示があった。そこで、被控訴人は同年三月二二日右の指示に従って、金一六万八、四七〇円の管理費の振込手続をしたうえで、同月二六日には控訴人と被控訴人との間で本件管理契約が書面で締結された。

3 しかるに、控訴人は、同年七月三一日に至り、「被控訴人が取得した本件土地は控訴人とその前所有者との間に紛争があり、そのため控訴人所有の電気、上下水道その他別荘施設一切の使用はこれを断わる。本件管理契約は控訴会社の担当者の手違いによるものであるから白紙に戻してほしい。」との書面を被控訴人に送付してきた。爾来、控訴人が本件土地の管理を拒否しているので、被控訴人は本件土地につき道路、上下水道、排水等の諸施設を利用することがでず、そのため本件土地を別荘地として他に販売することができないでいる。以上の事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

三 右認定の事実によれば、控訴人の開発造成した軽井沢三笠パーク別荘苑の土地の所有者は、控訴人との間に土地管理契約を結ばなければ、控訴人の所有にかかる水道等の諸施設を利用することができず、控訴人も右別荘地の利用者から管理費を徴収しなければ、右別荘地の維持、管理はできないものであること、右管理者と利用者との相互の依存関係に基づく管理契約(その法的性質は準委任であると解される。)は、右別荘地が別荘地として存続する限り継続するものと予定されていたこと、したがって、右管理契約が管理者側である受任者の一存で何時でも解約されうるというのであれば、別荘地の利用者である委任者は別荘地の利用を全うすることができないことが明らかである。

そうだとすれば、右のような特別な事情のもとに締結された本件土地管理契約は、その性質上、委任者側に管理費の相当期間にわたる不払その他相互の信頼関係を破壊する特段の事情が生じない限り、受任者側から一方的に解約することができないものと解するのが相当である。

してみれば、本件管理契約については、被控訴人に前記特段の事情の生じたことの立証のない本件においては、控訴人の主張の解約権の行使は許されないものといわなければならない。

(渡辺 鈴木 糟谷)

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